ジュール・ヴェルヌのノーチラス号の復元

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海底二万里
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(更新:2018年1月7日)
東京情報大学 (TUIS)井関研究室及びシンガポール国立教育研究所 (NIE)の協力


「海底二万里」とノーチラス号
 ノーチラス号といえば衝角(Ram)を持つ軍艦のイメージが強いが、原作を読めば、世界の虐げられた人々を支援するため、沈船の財宝回収と海洋資源採取によって資金・物資を獲得するとともに、世界中の海洋生物調査をはじめさまざまな観測調査と地理的発見を行っていることが分かる。

・水深1万mまで水温・塩分・帯電・色彩・透明度計測実験
・測深実験で水深16,000m!まで潜航
・紅海と地中海を結ぶアラビア海底トンネルの発見
・南極点到達を観測で確認
・船内には実に多くの生物標本が保管されている。
・図書室に納められた1万2千冊の蔵書には学術図書が多くを占める。

 なによりも、ヴェルヌは「海底二万里」を科学調査の航海記としてネモ船長とアロナクス教授に語らせている。当時の科学的な知見が随所に披瀝されており、それは膨大な種類の海洋生物から、海洋微生物、海洋島と環礁の進化、地質時代、海洋の熱塩循環、海洋大気相互作用にまで及ぶ。この観測航海記の雰囲気を持つ「海底二万里」は、クック船長やダーウィンほかの航海記の影響を強く受けている。

そこで注目されるのが英「チャレンジャー号」による歴史的観測航海との関係。エディンバラ大学自然史教授のワイヴィル・トムソンがロンドン王立協会を説得したのは「海底二万里」の出版時期にあたる1870年。その年に英海軍のコルベット「HMSチャレンジャー号(六世)」の改造工事が始まり、1872年12月21日、英ポーツマス港を出港した。すなわち、「海底二万里」がチャレンジャー航海を後押ししたかどうかは不明だが、少なくとも「海底二万里」の執筆とチャレンジャー航海の実現には共通する時代背景があったと言える。

- ノーチラス号の復元
 ジュール・ヴェルヌ(1828-1905年、仏)は「海底二万里」を執筆するためにノーチラス号のラフな一般配置図を作ったと信じられているが、それはまだ発見されておらず、多くのヴェルヌ研究家がその復元を試みてきた。しかし「海底二万里」の船内描写は一貫している部分と記述の揺らぎ・矛盾のある部分があり、その両方をうまく説明できるものはまだなかった(出典1、Michael Crisafulli)
 これまでの試みを考慮しつつ、西村、motoko Moonwall及びAley(Arcadia Ashylum)が、Second Lifeの"St. Michell- ジュール・ヴェルヌ博物館"(シンガポール国立教育研究所が運営)で、これまで以上に原作に忠実にノーチラス号の復元を試みた(具体的には下表を参照)。
一般配置図
See 船内案内

縮小画像をクリックすると1920×1018jpg画像が得られます。参照する日本語訳は新潮文庫「海底二万里」上下巻、翻訳:村松潔、2012/8/27によった。
Name/ LocationRegion OwnerSnapshots
全般
at Lily, 1500m
 紡錘形。先端の衝角と、操舵室等の船内収容機構は、南極海の探検時の砕氷が本来の目的と考えたい。プロペラは四翼。

 ノーチラス号の最大の謎は乗組員数である。潜水服の数([十着ほど」、新潮版、上p.253)、ボートの乗船者数(6人の漕ぎ手+1人+船長+3人=12人、新潮版、下p.109)、デッキでの漁労作業(「20人ほどの船員たちが」、新潮版、上p.282)、氷山に閉じ込められた際の潜水作業員数(十数人新潮版、下p.346)から、少なくとも10人×2組+船長+一等航海士+ゲスト3人=計25人とした。
 海底墓地での記述(ところどころに石灰質の沈殿物におおわれたかすかな盛り上がりがある、それが規則正しく配置されていることを見れば、人間の手で作られたものに違いなかった。新潮版、上p.415)から。さらに数名がナウティルス号に当初乗り組んでいたがその後死亡したことが伺われる。

ボート
 全閉型ボート。定員は12人以上(上述)で、「デッキの中央付近には、小型ボートがノーチラス号の船体に半分埋まって、小さなこぶみたいにもり上がっていた(新潮版、上p.212)、「このボートはノーチラス号の船体の最上部に密着するかたちで、それを収容するための空洞の中に配置されています(新潮版、上p.189)とあり、ノウティルス号の中央階段室から「鉄梯子」で昇って「ボートの横腹のハッチ」から乗船できた(新潮版、上p.)
 また「ボートが甲板から切り離され、・・・デッキから海面に投げ下ろされた。この作業には男ふたりで十分だった」と書かれているが、トップデッキの空洞に半ば埋まっているボートが男ふたりで十分に揚収可能との記述にはCrisafulliほかから疑問が呈されている。
 一方、ナウティラス号の定員が25人以上だとすると、その全員が1隻のボートで脱出可能とすると、ボートが大きくなりすぎて配置上も着水揚収作業の点でも現実的でない。
 そこで、その半分ずつ(それぞれ12人以上)を収容可能なボート2隻が船体中央部のトップデッキの両側の凹みに搭載されていると解釈した(1隻しかないとの記述はない)。こうすればボートは側方に容易に着水・揚収できる。
監禁室
 アロナクスたちがナウティルス号での最初の一夜を過ごした部屋。原作では部屋の位置の具体的記述はないが、部屋を出て廊下を10mほど行くと2つ目のドアを開けると食堂となると書かれている(新潮版、上p.158)。本復元では後部上方甲板のロックアウト室の手前の位置とした。食堂までの距離は概ね合っている。この部屋は負傷者が出た場合の病室(新潮版、上p.406)も兼ねると考えた。
士官食堂と
図書室
 天井の模様は、士官食堂では「繊細な装飾画(新潮版、上p.158)、図書室では「渦巻き模様」との記述に相応しいものを選んだ。

 天井の照明については、士官食堂とサロンでは「光る天井」(新潮版、上p.158、p.170)とあるが、図書室の天井の四箇所に「天井になかば埋め込まれた擦りガラスの球体」から光が放たれているとあり、また監禁室の天井にも「丸く突き出している半球状のつや消しの器具」から光が放たれている(新潮版、上p.115)とあるので、ノーチラス号では半球型の照明器具に統一されていると考えた。
 士官食堂と図書室の間は「二重ドア」(新潮版、上p.164)と書かれているが、本復元では一重ドアとした。
サロン
 「角を切り落とした大きな四角形の部屋(新潮版、上p.170)と書かれており、挿絵では前壁の左右の角が切り落とされているが、本復元では部屋が丸い船殻に適合するように、側壁の上下の角が切り落とされたものとした。
 水中窓で有名なサロン。絵画、武者飾り、天井の模様は原作の記述(「繊細なアラベスク模様」)から最もらしいものを選んだ。

 映画で有名なパイプオルガンがあるが、原作の記述によると、サロンにはバッハの楽譜はなく、苦悩するネモ船長が演奏する曲にふさわしいものとして、モーツァルトのレクイエム・キリエ KV 626が考えられる。
アロナクスの部屋
 「優雅な寝室(新潮版、上p.179)。誰用の部屋として設計されたかは記述なし。
船長室と
発令所
(左)質素な船長室。壁の英雄たちの肖像画(新潮版、下p.176)は原作の記述から最も相応しいものを選らんだ。「まだ若い女性とふたりの幼い子供の肖像(新潮版、下p.469)はネモ船長の家族のものと思われ、それに相応しいものを選んだ。

 アロナクス教授は船長室でネモ船長からナトリウム電池についての説明を受けたあと、「舷側に沿った通路を行くと、船の中央部に出た(新潮版、上p.189)とあるが、サロンの船側は水中窓があって通路が配置できないことから、緊急時に発令所に直行できる階段室をサロン後端の右舷側に設けた。

(右)船内上方甲板に原作に記述されていない発令所と一等航海士(副官)の部屋を設けた。ネモ船長が何日もサロンに姿を現さないことがあり、それは船長室と発令所を結ぶ通路がサロンの外側にあると考える代わりに、有事には船長と一等航海士が当直を組み、一等航海士のベットを交代で使用する場合もあったと考える方が自然。
居住区と
厨房

(左)潜水艦では1つのベッドを12時間シフトで共有する場合もあるが、ナウティラス号は長期航海であるため、1人1ベッドとして10人×2組(12時間シフト)の船員室を船内上方甲板と下方甲板に分けて配置した。トイレは発令所と浴室に1つずつ、潜水室の前に2つの計4つを設けた。
 ネッド/コンセイユの部屋は船内上方甲板に置いた。

(右)厨房〜浴室〜下士官食堂(Mess Room)は、サロン〜図書室〜士官食堂と同じレベルの船内下方甲板に配置した。

 原作では、船長室を出て船側に沿った通路を経て階段室に至り、それを通り過ぎたところに2人の部屋があり(新潮版、上p.191)それからドアが開けられると、広々とした食糧貯蔵庫に挟まれたかたちで厨房があり、厨房のかたわらに浴室があり、厨房の先には乗組員室があり、その奥の水密隔壁で仕切られた先が機械室と書かれている(新潮版、上p.191)。それに対し、本復元では、船長室〜サロン〜船側の階段〜発令所〜階段室の先にコンセイユたちの部屋があり、階段を降りて後方に向かって厨房、浴室、乗組員室、機械室が並んでおり、部屋の順序は合っている。
機関室と
潜水室

(左)原作の記述によると、機関は電動モーターではなく、「大型の電磁石を動かし、梃子や歯車を使った特別な装置を通じて、動力がスクリューシャフトに伝えられる(新潮版、上p.192)と記述されており、Radial Solenoid Engineのようなものと考えられる。

(右)原作では「舷側の、機械室の近くの部屋」が更衣室兼武器庫となっており(新潮版、上p.252)、その隣の小部屋を通じて海中に出る。潜水室は潜水室はディズニー映画ではムーンプール方式で船底のハッチから出入りするようになっているが、原作ではエアロック室を通じて船側方向に出入りするようになっている(新潮版、上p.256)ので、潜水室を船内上方甲板側に設けた。

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英原潜Swiftsure級
at Lily- Submarine
 ジュール・ヴェルヌ博物館の地上レベルに、英攻撃型原潜Swiftsure級が展示されている(Kirstenlee CinquettiとVeritas Raymakerによる)。ヴェルヌのノーチラス号とほぼ同じ大きさなので、両者を比較してみてください。
ジュール・ヴェルヌ博物館
at Lily- Entrance, 54m
 "St. Michell- ジュール・ヴェルヌ博物館"の到着点。そのそばのポストをクリックすると、この博物館の概要説明(英文)が得られる。またワイヤーケーブルを滑り降りる(吊り具を右クリックしてSlideを選択)と、海底基地の入り口に到着する。

 紫色の円錐を見掛けたら、それをクリックすると、ガイド用潜水艇が現れるので、それに乗ってイントロ、潜水艦、海底火山、上空、月面の5か所を訪れることができる。

出典:
1) Michael CrisafulliによるVerne's Nautilus

2) Stuart WierによるThe Design of Jules Verne’s Submarine Nautilus(PDF)

3) ノーチラス号とネモ船長

4) プロジェクト・グーテンベルグ- "Twenty Thousand Leagues under the Sea"(英語)